「兎」/菊尾
 
「折り入って相談があるんです。」

昨今この国では容易に学校へ忍び込ことができない。
僕が小学生だった頃よりも夜勤警備員の数が二人ほど増えていた。
ある夜の帰り道。酔いの勢いを利用してフェンスを乗り越え母校のブランコを揺らそうと忍び込んだ日のことだった。
ブランコの近くには体育倉庫、その隣には飼育小屋がある。
何度かブランコを揺らし、分かってはいたがブランコの揺れに酒の酔いがブレンドされ、あともうすぐで逆流してしまいそうだ月の輪がブレて焦点が焦点が!と内心騒いでいた。
その自身の内面的狂騒に呼応するかのように飼育小屋で金網を掻く音がした。
ブランコを扱ぐ音がうるさすぎ
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