水面を漂う糸/皆月 零胤
その日の激しい夕立で
空の埃も洗われて
静まり返る夜の水面に
ゆらゆらと揺れる月
僕らはそのずっと下
仄暗い水底の上
その薄明かりの中
沈んだままで抱き合って
水の中の密室で
唇を這わせれば
理性の糸が解けてゆく
その糸を赤く染め
互いにそれを巻き合って
非日常を加速させてまで
置き去りにしたい日常は
何のためにあるのだろう
腕を押さえて覗き込む
燃える瞳はめらめらと
今夜すべてを奪っておくれ
そう思いながら奪い合う
染めた糸の赤色が
水に溶け出し色を失い
解けて消えてしまっても
この瞬間に溺れられるなら
永遠なんていらない
で
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