共感装置の勝利/岡部淳太郎
 
」にあるから、それが何なのか語り手自信にも判然としていない。その導入部から第二連に行くと、今度は「壁が落ちて 柱が落ちて」と目に見えるものが落ち始めるものの、「ぜんたいが落ちる」とまたもや曖昧な書き方がなされている。そして第三連では、「膝が落ちて 肩が落ちて/なんだかするっとぬけるでしょ」と身体感覚をともなった描写になる。これは一種の自己崩壊の感じであるだろう。それに対して第二連の描写は世界が崩れ落ちるような感じだ。全体的に見てこの詩はきわめて観念的であり、そのために見かけのわかりやすさとは裏腹に何を言おうとしているのかわかりづらい詩であると言える。また、「落日――対話篇」の方は途中までは単なる恋
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