共感装置の勝利/岡部淳太郎
るいは自然に(多くの場合は自然にだろうが)作者が言葉を自らに寄り添わせている。言葉と作者がべったりとくっついていて、そのために自分のことしか見えず、視点がモノラルになりやすい。だが、それはいっぽうで読み手の共感を得やすいということにもつながってくる。「うしろで何か」と「落日――対話篇」は平易ではあるものの、ぎりぎりのところで読者の共感を回避しているように見える。だが、多くのポエムはむしろ積極的に読者の共感を得ようと躍起になっている(個人的には、それが時に煩わしく思えてしまうことがある)。作者が言葉から離れられずに自己が前面に出てしまうために、言葉に自己が丸写しにされ、それがそこに書かれてあるのと似
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