夏の終わりに吹く風に 3/十重山ハルノ
宵の風が薄手のカーテンを膨らませた後で
すぅと部屋を一回りする
タバコの煙の行き先を変えて
乾いてしまった洗濯物を軽やかに揺らす
風はすでにあたたかいものではなく
輪郭のぼやけた秋を運ぶ
テレビはもう消してしまった
あかりはもう消してしまった
月は満月には足りないようだ
季節は秋には足りないようだ
風の通り過ぎてしまった部屋が
あまりに静か過ぎるので
やがて僕はもたれた壁の一部になって
無人の部屋で秋の訪れを待つだろう
そして部屋に残される
取り込まれない洗濯物と吸いかけのタバコ
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