屋久島の鯖 /
服部 剛
屋久島の暮らしでは
無数の鯖が
村人達の手から手へとまわり
こころからこころへとめぐり
一匹の鯖を手に
樹木のように立つ老人は
不思議なほどに
目尻を下げる
夜明け前の漁船に釣り上げられ
一晩中働いた漁師達が
村人達のもとへ
鯖の群を放す時
かれらは鱗(うろこ)をひからせ
地上を泳ぎ始める
村人達の間を
目には見えない
海にして
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