多重化してゆく夢の記録/佐々宝砂
日本の古い音楽も入っている。曲名はよくわからない。明るくて古くて調子がよくて脳天気な唄だ。そのあたりは早送りしてくれと説明書にあるのだが、彼はついつい画面に見入ってしまう。長い時間が経ってから、彼は十冊の本を荷にまとめ、母と妹の住むアパート宛の住所を書き、自分の親友宅を訪ねその荷物を親友に託す。画面かわって妾となった妹が、暗い部屋の布団の上で泣いている、そのまま、フェイドアウト。
【シーン5】
シーン1と同じ時代。同じ国。夜に近い夕刻。カメラは風光明媚な小さな島を俯瞰し、その島の小さな街が写され、だんだんクローズアップされてゆき、最終的にひとつのガソリンスタンドを写す。ごくふつうの日常的風
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