多重化してゆく夢の記録/佐々宝砂
 
。わたしたちは、成功するのよ。わたしたちは、あの事故を防ぎ得るのよ、成功するのよ。ひとつの可能性として。


【独白―私】
ロシア革命が起きなかったということは、この世界、私佐々宝砂が生きる世界が舞台ではない。ではここはどこだろう、私の夢であることは明白だが、私は自分が夢見ていることを知りながら、夢の舞台を操作することができない。いや、簡単にはできない。私の眼前で、三つの物語が錯綜している。一つは、アメリカを思わせる土地での事故、おそらくは放射能事故を巡る物語で、多重世界をテーマにしたSFだ。そちらの物語ではロシア革命があったのだろうか、なかったのだろうか? 判然としない。もう一つの物語は
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