石ノ蛙 /服部 剛
彼はいつも、四つ足を
ぴたりと大地につけている。
一体何が本当に
天から彼に
与えられたものなのか
ぢっと開いた丸い目で
夜の静寂(しじま)を見抜く
蛙のように、私はなろう。
でんと構えて咽喉を鳴らし
詩(うた)を天に昇らせる
蛙のように、私はなろう。
(この世は虚ろな、処です・・・)
愛や幸せと人の呼ぶ
ぼんやりとした輪郭に
飢えた手を伸ばしても
それらはいつも
霞掛かった、闇の彼方へ
四つ足を
ぴたりと大地につけた
私は、石の蛙。
もし風の音色が見えたら
石の体を粉々に破って
緑のからだは
宙に翔ぶ
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