うたうたいの飼い猫/梨玖
ありきたりかも知れないけれど
願いを載せた歌詞を作る
辛うじてそれを唄にした声は
冷えた空気を吸い込んで、震えていた
ふわり、最後まで寂しがりやの黒猫を抱き締めた
とくり、と鼓動はきっと早っていくけど
もう疲れたなら、終わらない唄をうたうよ
持って行って欲しいのは、この体温だけでいい
大好きだよ、と呟いた声は当ても無く、誰にともなく、
瞼に腕を当てた 泣いてなんか ない
うたうたいの飼い猫
きみが生きた証はこの唄に
(哀れみのうた 悲しき声が枯れるまで)
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