The Muddy marines/詩集ただよう
 
物心がついたのはいつだったろう。幼稚園や小学校の記憶は心の泥土のずっと深いところに沈殿したままだ。記憶なんてものは実に不思議なもので、時間がたつほどに鮮明に思い出せたりもする。それは、人や出来事や物なんかに心を掻き混ぜられると、意識とは別のところで舞い上がるからだろう。僕のグラスはすでに泥が溢れそうだ。

幼稚園に入ったばかりの頃の僕は、とても甘えん坊だった。僕は幼稚園でいじめられていた、そんな事実は僕の記憶にはてんでないのだけれど、それでもその小さな男の子は幼稚園に行くのを嫌がった。幼稚園に行けば仲の良い友達もいた。絵を描くのが好きだったその子は、周りの友達に絵を描いてあげたりもしていた。
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