悪意の在り処/岡部淳太郎
 
ぞれに孤立した気分が支配する時にあっては、へたな善意など薬にもしたくない。個人的な感じを言わせてもらうならば、もはやいまの私には人の善意というものが信じられなくなっている。とりわけ、見知らぬ他人の善意というものが、嘘くさく感じられてしまう。だから、この時代に詩の中に全方位の善意をつめこむことは、有効ではないように思えてくるのだ。
 世界には無数の悪意があふれている。そこらじゅうの暗がりや曲り角で、隙あらば襲ってやろうと、悪意がじっと身構えている。気をつけていないとどこかわけのわからない場所へ連れ去られてしまいそうになる。そんな世の中にあっては、人の善意だとか正義とかいうものは、先験的に存在しえな
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