悪意の在り処/岡部淳太郎
えない。正しいものはない。いや、あるのかもしれないが見えにくいし、どこにあるのかわからない。それに対して悪は確実に存在する。理不尽なまでの暴力的な悪というものは確かにあるし、堂々と眼に見えるかたちで世の中に現れている。詩は一般の人々から見れば、単に手軽な抒情で心を安らがせてくれる便利なツールに過ぎないのかもしれないが、このような時代状況の中で単純な溺れやすい抒情に向かってしまうのは、それがひどい時代であるから当然であるのかもしれない。だがそれ以上に、手軽な抒情だけでは時をしっかりと切り開いていくことが出来ないように思えるし、こんな時代であるからこそ逆に悪意をしっかりと見つめて、それを意識することが
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