悪意の在り処/岡部淳太郎
それが新しい時代であるというだけで何とかなるのではないかという、根拠のない期待感がどこかにあった。だが、新世紀になってもただ数字が変っただけで時はちっとも前に進まないということがわかってしまった。そのために閉塞はますます確固としたものになってしまい、人々の間に意味のない享楽と絶望とふたつの方向の気分をもたらした。そんな中で詩を書くというのは、どういうことだろうか。いまさら薄っぺらい希望をつづったところで、ますます空々しく響くだけだろう。そもそも詩とはもともと希望や善意などというものとは無縁のところで書かれてきたのではなかったか。何もかもが信じられないような、人を見たら泥棒と思えというようなそれぞれ
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