( 無題 )/服部 剛
 
夜道に光る自動販売機の横に 
「TRASH」と黒字で書かれた白いゴミ箱が 
暗闇の丸い口を開けていた  

空っぽのペットボトルは棄ててもいいが 
棄ててはいけないものもある 

旅人の彼は自動販売機を横切り 
どしゃぶりの雨に濡れたまま 
人知れぬ夜道を歩み続けた 

ビルの屋上から飛び降りそうな 
女の腰を 
必死に抱き止めた昔日の場面を 
ふいに思い出しながら 




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