秋の序章/銀猫
 

夏の余した最後の赤で
サルビアが燃える

風が湿気を掃い
柿の実がひっそりと
みどりの果実を隠していても
項を焦がす陽射しや
散水栓の向こうに出来る虹
そういう夏の名残りに守られて
燃え、
尽きる


  苦瓜の、
  花弁の黄色を黒アゲハが探している
  まだ終わりを信じない。
  汗ばむ額や
  熱くなったサドルの。


皴枯れた立ち葵の、
未成熟な種子を抱えたまま
褐色になった向日葵の、
知る
夏の骸


九月は
否応無しに、
わたしの欠けらを
蜻蛉に変え
最後の赤、のまま
日焼けが褪せてゆく







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