夏の終わりに吹く風に 2/十重山ハルノ
 
ジを伝える液晶画面は滲んでいた。メッセージを読み終えた後で、私は何とか、彼の連絡先を消去した。そしてしばらく、風の吹く方向に車を走らせ始めた。車内に吹き込む風が急に温度を下げたような気がしていた。そういえば彼との付き合いは、春の終わりから秋の初めまで、半年にも満たないくらいだったんだと、そのとき気付いた。なぜだか可笑しくて、声を出して笑った。すると、口元からタバコが滑り落ちていった。私は、あわててハンドルから手を離して、スカートに落ちたタバコを拾い上げてくわえ直した。スカートは、彼が誕生日にプレゼントしてくれたものだった。前を向きなおすと、対向車線を走る車のフロントライトと、タバコの火が重なって見えていた。

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