夏の終わりに吹く風に 2/十重山ハルノ
たのが8年前。あまりに順調な生活。あまりに先まで見えすぎた未来が、逆に私を不安定にしたのだろうか。彼に「付き合いたいな」と言われた時に、私は夫を隠した。愛くるしいわが子を隠した。私の中の色々なことを隠して、私は彼に抱かれていた。ベッドでタバコを吸う私に、彼は「タバコ吸うんだ?」と言った。「飲んでるとき、全然吸ってなかったから。俺も吸うからさ、ちょっと遠慮してたよ」と、露にした私を、彼は抱きしめてくれたのだ。今思えば、強がりだったのだろう。夫がいて子供がいる私に、「そっちがいいなら、いいよ」と彼が言ったのも、彼と離れられなかった私も。子供を迎えに行く私を笑顔で見送る彼も、迎えに行ったわが子に自然と「
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)