占いに消えるサラリー/詩集ただよう
イラン人は私と彼の間にクリスタルを置いて、私に瞳を結びつけてきた。
どうやら私に未来を見せたがっているようだ。
彼は私を脇目に自慢気に綺麗な砂時計を返した。
彼の髭は逞しく顎に張り付いていて、私は笑いが止まらなくなった。
占い占いと言うので不思議に思ったが、今考えるとあのクリスタルは売り物ではなかったようだ。
続けてすごいだろと下手糞な日本語を私に吐いてきたが、彼がよこした神は、私の下の裏で、既に裏返っていた。
のろりと、うらぶれた。
私は罰の悪くなった頭に少し戸惑った。
愛に溢れてしまって、全く何も信じられない。
占い師にどうするかと聞かれたので、もう何もいらないと答えた。
全てはここにある。
ドアが開いた。
次の客が怒り狂っていた。
慌てた髭の男が優しく真横から言ってきた。
「迷ったらまた来なさい」
そう言われ確信した私は、私を騙す他人を殺して人殺しになった。
もう何もいらない。
―次の客が、喜び出した。
戻る 編 削 Point(0)