逃亡の日/ましろ
ピカリと稲妻がともり雷鳴が空を割った
今は小康状態
夫はゴルフにでかけ明日の朝まで帰ってこない
平静を装ってはいるが
絶え間なく続いた昨夜の雷に
腕も腹も脳天も足の裏からも入り込まれ
好き放題に分割された町はざわついている
逃げるなら今だ!
わたしは思った
時間をみつけこつこつと描きあげては
「いいねー」と夫の微笑みをもらった数枚の絵も 詩も
たしかに息づくわたしの居場所も
なにもかも捨てて飛び立つんだ
カード一枚を握り締め
荒い吐息でくもる新幹線の窓に雨がぽつんと落ちる
横浜も嵐かもしれない
その方が好都合だ
昔住んでいたよう
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