田吾作弁当/天野茂典
 
  

  だれもいない台所でぼくは
  ひとりおこわの田吾作弁当を
  食べた SOGO地下食料品売り場で
  買ってきてもらったものだ うまくも
  まずくもなかった 見栄えはいいが
  味がないのだ 都会の味でも
  田舎の味でも 世界の味でもない
  単なる平均値なのだ
  それはまるでいまの日本を代表する
  値札のようにおもわれた
  能面なのだ そのものに表情というものがない
  寂しかった 一人で食べたせいもあるが
  味気なかった 今の日本のコンビニや
  ス−パ−の食品でもおなじことがいえるのだろう
  均一化されることがいいことか どうか
 
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