若さと老い/パンの愛人
 
彩を欠いた仮装の深刻さのうちに沈みこんでしまう。しかし、だれだって好きこのんで暗い話をしたいわけではないし、そもそもそんな話をじぶん自身ほんとうに身につまされて感じているわけではないのだ。だからこそ、無意識のうちに口が動くのである。「何か面白いことないの?」
 これが精神的な老化現象であるのはほぼ間違いがない。一見、泰然自若としているが、要するにこういった気分は、じぶんが動くのは億劫だから、他人が動いているさまを観覧することで不満解消の代用にしようという怠惰から生じたものであるのはあきらかだ。また、こういった受動的態度の危険性を察知しているからこそ、その打破への焦燥感を覚えるのであろう。
 こ
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