若さと老い/パンの愛人
これが一時的な症候であるならまだしも、慢性的になれば、いよいよ生活は魅力のないものになってしまう。これはけっして生活が安定した結果ではない。いまだって昔とかわらず、あらゆる面で不安定な状況はつづいているのである。たとえば、経済上に由来する不安、不適応感から生まれる疑心や嫉妬、特異な性衝動、など。
歳月は確実にわたしたちの若さを奪ってゆく。それは肉体的には言うに及ばず、精神的にも同様である。しかし肉体的な退化はあきらめがつくが、わたしは精神の機能が衰えてゆくのをただ傍観していることはできない。もちろん、肉体の衰えが精神の磨滅をひきおこすこともあれば、またその逆もありうるだろう。「健全な肉体に健
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)