少女でも少年でもないのだから/紫音
 
少女である
ということが特権であった時代は過ぎ
少年である
ということが特権であった時代はもっと前に過ぎ
いまや
少女でもあり少年でもある
ということが特権であるかどうかも怪しい

死ぬ権利
ということが言われて久しい
死ぬ義務
ということは免れようもないので義務ではなく
いまや
生きながら死んでいく
ということが死にながら生きているのと区別がつくかも怪しい

峠を越えたあたりの山小屋で
ここで飢えていくのだな
と感じた瞬間に
目の前に一斤のパンがあり
あり難いと思いながらも
死ぬことも許されないのかと 希望を霧散させ
[次のページ]
戻る   Point(4)