少女でも少年でもないのだから/紫音
 
少女である 
ということが特権であった時代は過ぎ 
少年である 
ということが特権であった時代はもっと前に過ぎ 
いまや 
少女でもあり少年でもある 
ということが特権であるかどうかも怪しい 
死ぬ権利 
ということが言われて久しい 
死ぬ義務 
ということは免れようもないので義務ではなく 
いまや 
生きながら死んでいく 
ということが死にながら生きているのと区別がつくかも怪しい 
峠を越えたあたりの山小屋で 
ここで飢えていくのだな 
と感じた瞬間に 
目の前に一斤のパンがあり 
あり難いと思いながらも 
死ぬことも許されないのかと 希望を霧散させ
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