尺/榊 慧
 
含むと独特のにおいと味のようなものが広がる。とっとと終わらせたい。その一心だった。気持ちいいのか呼吸が荒くなっていく。聞こえる男の声は、まさしく変態らしい声。ガッと男が俺の首を持ったかと思うと口の中に吐き出した。吐き出しながら男はわざとすこし俺の口からそれるようにし、顔にもかけた。飲んで欲しいらしい。後で吐こう。俺は出来る限り帰る準備をし、男の話を聞かずに部屋を出ようとした。ガチャガチャとドアノブを動かしてから気がついた。男は、最初から鍵を閉めていたのだ。いつも「いいの?鍵開いてるから人が来ちゃうよ?」などと言っていたからこのことを失念していた。なんたる失態。しかしそこでくじける俺じゃない。男にこ
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