イワン・デニーソヴィチの一日/パンの愛人
ソルジェニーツィンが死去した。享年八十九歳だったという。
かれの文学的な実績や政治にあたえた影響については、今後もいろいろな評価がなされるだろう。そして、今後どのような評価がなされるにしろ、「収容所群島」が文学史上にひとつの事件として記載されつづけることに変わりはないように思う。
たしかにかれはソ連共産主義体制下の反体制知識人として活躍したが、しかしだからといって自由主義陣営の迎合者であったわけでもない。かれの政治信念を支えていたのは、ひとえに熱烈な愛国心であった。かれに国外追放の憂き目をあわせたのは、あるいはこの愛国心の結果だったともいえるのである。それが文学者として幸であったか不幸で
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