西瓜へ架る虹の潮/詩集ただよう
 
サンダルをつっかけて、あの頃、未だ話し始めたばかりの娘と青果屋へ行った日のことを覚えている。夏へかかる日射しを煙たがるでもなく遮るため、麦わらをかぶせたさまた屋のさまたさんは、その日も日課通り、田舎らしい露骨なアスファルトへのめり出す緑葉へ、ゴムホースをつまみ、振り撒いた水道水で小さな虹を架けていた。その頃、私には勢いよく出ていくしぶきがスローモーションに見えていた。

低学年のときに移り住んだあの町には、潮の香りで頭がべたつくような満ち引きが人々の身近にあって、影がくっきりと延びる夕暮れには、私はそんな年頃で、蟹とじゃんけんをして遊んだ。勝てた砂浜では貝がとれたり、いつも何かいいことがあっ
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