スノウバースディ/赤澤るろる
 

「8月に雪が降った」


病室のベッドの上に
笑顔の女が居る
窓から空を見上げながら


この女の笑顔を見たのは
二回目だった





その一言を僕に置いて

女は死んだ

つまらない人生だっただろう

そんな事ばかり考えたら
立ち直れなくなりそうで
昨日の夜食べたモノを必死に思い出した


病室は暑かった
女の居ない病室は
ただただ暑いだけだった


綺麗にされたベッドに座って
あの一言を何度も頭の中で繰り返した

それよりも
あの笑顔を

寂しそうな

綺麗な


笑顔を


窓から空を見た
いつ
[次のページ]
戻る   Point(0)