自爆テロ/木葉 揺
 
いつのまにか女は俺の前にいた
息を切らして
ずぶ濡れで

「間に合ってよかった!」
「ジャマすんなよ」
「ううん、私、あなたに会うために生まれてきたの」
頭、おかしいのかコイツ
「よかったぁ」
女は滴をしたたらせた顔に
至福の笑みを浮かべていた

「そういうわけで」
俺の手から爆弾を奪い
女は路地へ向かって走り出した

泥棒?
慌てて走り出す
返せ!俺の名誉!
女は門をくぐると左に曲がった

門から生ぬるい空気が入ってくる
俺の体を包み、くすぐり始めた
あまりの心地の悪さに足を止める
次第に体全体が熱を帯び
一気に全血液が上昇・・・!


やがて、中途半端なにぶい爆発音―

全身の力が抜けた


翌日カフェはにぎわっていた
街はずれの墓地で
小さな爆発があったと
人気のタルトの次に話題になった


許せない
絶対に許せない!
(あなたに会うために生まれてきたの)
体の震えが止まらない
寒いのに汗が止まらない


もう二度と爆弾は作れなかった

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