アウグストゥスの月を抱く/皆月 零胤
果てしない闇の中
なぐさめの月を抱く
その瞳に映す僕の罪は
笑うたび優しく刺さる抜けぬ棘
欲望は満たされることはなく
偽りのぬくもりは
終わったその瞬間から
この手の中から零れ
漆黒の涙となって天空へ還ってゆく
癒えぬ傷痕を指先でたどられると
終わらない悲しみに包まれて
遠い世界へと僕を運ぶけど
もうあの頃と同じものは何もない
瞼に浮んだあのひとは
目を開けると消えてしまい
僕は雲を切り裂き螺旋を描いて
地上に落ちて粉々になる
それでも今夜瞳を閉じて
この胸の空白の中
瑠璃色の灰を撒き散らして
曇った夜空の遥か彼方の世界で
アウグストゥスの月を抱く
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