暮らすように歌う/RT
 

悲しみから抜け出せない時は
逆に明るくポップな曲を作ることにしている
あぐらをかいて床に座り
ギターを膝に抱き
最初の指は決してマイナーを押さえないよう

歌いながら
少しずつ構築されていく
光かがやく世界の中を
スキップする代わりに指を弾ませ
歌が終わるまで
明るい世界の住人となる

最後まで作り上げた曲を
くりかえし歌いながら精密に磨きあげる
満足するまでくりかえし
歌い上げた頃には
虹の橋を手をつないで渡る事も
ミルクティーに星屑をかき混ぜる事も
真っ白な翼を青空に羽ばたかせること事も
なんの面白みもない
暮らしのひとつに成り下がる

ギターを床に置くと
悲しみが清らかに懐かしく
すでに片足が脱げているのに気付く
右の足首で汚れたパンツみたいに引っかかっている
それを
靴投げみたいに飛ばして
何も入れないコーヒーを淹れる為に
私はキッチンへ立ち上がる




  即興ゴルコンダ(2008/08/13(Wed) 15:50:09)


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