かつて/猫のひたい撫でるたま子
 
かつて私は愛されていた


空を飛ぶことができたから

血を見たことがなかったから

誰の布団でも寝ることができたから

吐くこともなく毒に酔えたから

人の眼鏡を踏むことができたから

喋らなくても良かったから

鏡にうつして、美しかったから

誰をあいすることも知らなかったから

戻る   Point(2)