夏空/皆月 零胤
 
夏空の青色は完璧な色をしているが
綿菓子になり損なったみたいな
散らばりかけた残念な雲が広がって

夏の始まりからその陰に隠れていた
終わりがそっと顔を覗かせている

木蔭には脱皮に失敗した蝉の幼虫が
その動きを止めたままで
夏が終わるのを待ち続けている

そんなことも構うこともなく
昼夜を問わずに鳴き続ける蝉の声を
一本足りない五線譜みたいな電線で
記号としての音符に徹している鳥たちが
声も出さずに目を瞑ったまま聴いている


移ろいやすい空色に翻弄されるように
やがて降り出す夕立に濡れても
蒸発してしまいそうなこころを抱えたまま

僕がすべてを否定しようとするその度に
夏がその終わりを加速させていく
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