忘れないで/蜜柑
 

お盆休みが来ると

街は色を変えていく

都会から若者が消え、生まれ育った静かな町が

騒がしくなる

目も覚めやらぬ
太陽がまだ2度寝をしている頃

私は家を出た

日々の日常は忙しく過ぎさり
昨日話した相手の顔さえ忘れてしまう

きっとその忙しさに、甘えていたのだろう

忙しいから仕方がないと

私は今日
何年ぶりかに墓石の前に立つ事が出来た

何も言ってはくれないけれど

寂しい顔をして

"来てくれてありがとう"

と笑っている祖父の姿が見えた

あの頃と何も変わらない

曲がった背中と皺くちゃな笑顔
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