肉じゃが/かんな
ベツ」
「そうだっけ」
「あとセロリとキノコと海藻と、あといろいろ」
「よく覚えてるんね」
「全部かわりに食べさせられてたから」
「じゃあなんであの日だけわたしが泣きながら食べてたん」
「覚えてない」
そう話を切るとまたPCに向かってキーボードを叩き始めた、その後ろでわたしは生野菜を泣きながら食べなければならなかった過去について考えてみていたけれども、思い出せずいらいらして時計に目を向けるといつの間にか八時半を針が指そうとしていた。
いつまでブラインドタッチをし続けるつもりなんだろうと思い始めて、何してるん、ともきけないのは嫌いなものを食べてもらっていた昔が後ろめたかったわけではないけれども、そろそろこの肉じゃがの片付けもしないといけないんじゃないかと食器を持って席を立った。
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