「 電池 」 /服部 剛
 
50を過ぎた看護婦さんが 
休憩時間も惜しみ 
寝たきり患者の爺さんに 
パンを千切って食べさせる 

勤務を終えた夕方 
棚に書類をしまう
白衣の背中から 
電池が一つ、ぽとんと落ちた 

もう長いこと 
一緒に働いてきた僕は 
床に落ちたそれを拾って 
「おつかれさん」と手渡した 




戻る   Point(4)