盲目の夏/皆月 零胤
 
夏の青空にサナトリウムの白い壁が
セラミックナイフのように突き刺さる
静脈に流れる爽やかな風を感じるように
鉄格子の越しのひこうき雲は流れて
エアコンの室外機からの水溜まりに太陽が
反射して風に揺れ天井に光の模様をつくる

  窓から続く岬の灯台は
  夜になるたび人目を盗んで
  船を一艘ずつ丁寧に沈めている

  今夜沈められてしまった船を
  何艘か拾いに行ってみることにしよう

木蔭で涼むバイクを眺めているだけで
回診の時間になってしまい白衣を着ると
見えない夏が終わってしまいそうな気がした

  夜になり岬に出かける
  灯台はこっちを何度も向いて
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