蝿と白百合 /服部 剛
美しい花にそっぽを向かれると
ぼくは自らが蝿だと気づきます
柔らかい蕾に包まれて
花の囁きを聞く日を
ずっと夢見ながら
周りを飛んでは見るが
こちらに微笑む気配は
いっこうにアリマセン
ただあきらめるのも情けなく
あきらめないのも女々しいね
美しい花にそっぽを向かれたまんまでも
かみさまはいつも黙って
蝿の小さい心臓をぎゅうっとしめつける
それでも蝿は蝿として蝿なりに
低い空を飛ばねばならぬ
人知れぬ涙の粒を土に落として
悔しさと切なさと寂しさと
自らの裂けたこころをつらぬいて
震える無心の羽ではばたきます
目の前に茫漠と広がる
まっさおな空へ
吸いこまれる
小さい独りの黒点です
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