溺れる魚/皆月 零胤
午後からは雨がやんだ
小鳥のさえずりを聴き
その翼を懐かしく思う
雨上がりの空に架かる
あの虹の向こう側には
僕の両親が住んでいる
会いに行く途中の道で
水たまりで溺れる魚が
凍えて震えていたので
そっと陽だまりに置く
スーパーの前あたりで
虹を見失ってしまった
諦め買い物袋を下げた
帰り道に魚の姿はない
無事ならばそれでいい
洋服を着るのに邪魔で
むかし手術で切除した
翼のあった痕が痛んだ
明日もきっと雨になる
また溺れなければいい
そう思い見上げた空を
翼を広げ鳶が飛んでる
その嘴には魚のような
形の影を見た気がした
傷痕よりも胸が痛んだ
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