溺れる魚/皆月 零胤
 
午後からは雨がやんだ

小鳥のさえずりを聴き
その翼を懐かしく思う

雨上がりの空に架かる
あの虹の向こう側には
僕の両親が住んでいる

会いに行く途中の道で
水たまりで溺れる魚が
凍えて震えていたので
そっと陽だまりに置く

スーパーの前あたりで
虹を見失ってしまった
諦め買い物袋を下げた
帰り道に魚の姿はない
無事ならばそれでいい

洋服を着るのに邪魔で
むかし手術で切除した
翼のあった痕が痛んだ
明日もきっと雨になる

また溺れなければいい
そう思い見上げた空を
翼を広げ鳶が飛んでる

その嘴には魚のような
形の影を見た気がした

傷痕よりも胸が痛んだ
戻る   Point(21)