蝉の抜け殻 /服部 剛
 
街路樹の葉群から 
蝉達の合唱の降り注ぐ 
夏の散歩道を歩く 

額の汗を拭うと 
数日前傷ついた右手の瘡蓋(かさぶた)が 
いつのまに剥がれていた 

唇をぐっと噛み締める時を経て 
きっと全ての哀しみは 
いつか剥がれる 

街路樹の葉群は揺れて 
みどりの風は
散歩道を吹き抜ける 

ふと見下ろした 
足元に 
蝉の抜け殻が、ひとつ。 




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