夏の夜の浜辺を走る /
服部 剛
白百合の姿でレジ打つひとの
麗しい指をふいに思い出しながらも
( 無心 )を目指し
只走る
汗の飛沫を全身に纏い
すべての切なさを吹き飛ばし
赤褐色の光線の街灯照らす
浜辺の丘へ
只走る
砂にまみれた首筋で
大きい丸石を枕に
力尽きた体は
寝転ぶ
世界は只、すっぽりと
夜空に
覆われていた。
アンタレスは独り
流れる雲間に
赤く光っていた。
いつまでも繰り返す
潮騒は、ひりひり胸に
押し寄せていた。
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