空梅雨の後に/セルフレーム
―どうしてあの時君は、
笑ってくれたんだろう。
空梅雨の後に
遅い夏。
夏といってもまだ気温は20℃程度で、暑くも寒くもない。
梅雨が明けて、夏が来たなんて、まだ少し信じられない。
今年は空梅雨だったから。
あの時と似ている。
僕が君と過ごした、最後の夏―
あの年もやっぱり空梅雨で、快適な6月を過ごしたのを覚えてる。
今みたいに適度な温度の夏で、
都会から来た君は「春みたいだね」って言っていた。
テトラポッドの下の砂浜で、赤と青の自転車を停めた。
その向うの防波堤の裏側には、誰の手もつけられていない綺麗な海が広がっている。
此処の
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