ZERO POWER/キキ
 

 かわいたままで
 なんの匂いもしなかった
 くんくん鳴く仔犬のかたちをした陽射しが、まぶしい
 何かを探しているのはまちがいない

 まちがいない

 今日やってみたかったのは
 木陰のベンチに座り
 ひとつの本とペットボトルを分けあうこと

 仔犬じゃなくても
 わたしの甲をなめてもいいよ



わたしの足元まで
雨は、やがてたどり着く
プラットフォーム
にくらしい、が
がやがや増えて
押しだされるようにあの子は帰る
塗りなおされたばかりの列車に乗って
やがて来る
かみなりのように
ひかりの色をした残像だけをまた置いていく

からからで
何もなくて、晴天
つつがなく会えた
それだけを覚えて眠る
その夢を
知るひとがいなくても
何がなくても
わたしはいつの日もみじめじゃなかった

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