未完音/梨玖
 
きっと 唄い始めた瞬間から
噛合わなくなったのは 僕の生きる全て

部屋に捨てられた 水色のギターの
できそこないの欠片を 泣きながら拾い集めて

例えば ただ唄おうと想う
目も開けないで 自分を忘れて
その度に 強く響くのは
願う言葉をならべた 自分の声


いつのまにか 部品の揃ったギターを
弦の無いまま弾いた その願い

それは きっと容易いことで
必死で 繋がれた数々を 折れたナイフで 切り捨てた

例えば 気付いたとしよう
その望み 生まれた時僕は唄っていた?
届くようにと 伸ばしたてのひらさえ
上手に見れないのは 如何してだろう?


振り返らないで 繰り返さないで
例えば気付いたとしよう
生き始めた瞬間から
噛合わなくなったのは 僕の唄う全て


例えば 唄ったとしよう
その望み 未完成のてのひらで
あのナイフで千切れた数々を
噛合わせようとしたのは 僕の生きる全て

僕の唄う全て
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