行程/縞田みやぎ
えのめりに腰をあげる
たくさんの荷物を抱えなおしたころに
ゆるやかに加速がはじまり
年寄りの足がもつれる
にがわらいをした
もうねむくはなかったので目の端で
年寄りと車掌が話すのを
見ないようにして聞いた
やはりそれはいくつか前の駅で
あらあ とか なにか聞こえた
うすく暮れ始めた駅に
迎えはいないのだろうと 思う
とびらのわきにひざを曲げて立って
うつむけた年寄りが黙っている
ただ前をみて走っていく
はすむかいの男が首を伸ばし
窓に向けてまゆをしかめた
やがてもういちど足を組み直し
きっと
とおくに行くのだろうと思う
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