行程/縞田みやぎ
 
えのめりに腰をあげる
たくさんの荷物を抱えなおしたころに
ゆるやかに加速がはじまり
年寄りの足がもつれる

にがわらいをした

もうねむくはなかったので目の端で
年寄りと車掌が話すのを
見ないようにして聞いた
やはりそれはいくつか前の駅で
あらあ とか なにか聞こえた

うすく暮れ始めた駅に
迎えはいないのだろうと 思う
とびらのわきにひざを曲げて立って
うつむけた年寄りが黙っている
ただ前をみて走っていく

はすむかいの男が首を伸ばし
窓に向けてまゆをしかめた
やがてもういちど足を組み直し

きっと
とおくに行くのだろうと思う



 
戻る   Point(11)