艶めく花の香に/いすず
あのとき、覚えてる?
時間ぎりぎりに、抱えた花束を後ろに持って、
あなたは駈けてきたね
予算内で、たくさんの花を欲しかったから、
というあなたは、
くたびれたような、開きかけたカサブランカを
5,6本もたばねて見せたの
包み紙は安っぽいセロファンだったけど、
その心意気が嬉しかったの 覚えてる
いっしょに勉強している間、
ずっとどきどきしていたの
時々、他の仲間とはなしている内容に
コメントをして、
それにあなたが相槌を打って、
なんとかなりたつ会話
おおらかにはなす同僚のあの娘が羨ましいとも
でも、わたしのまえで
眼を細めて
リラックスして本を読む
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