夜、アスファルトを背に空を見上げると/yuma
 
アスファルトを背に仰向けに倒れると
まだじんわりと残る太陽の熱が掌へと伝播して
ざらついた小石が髪に纏わりついた
熱の匂いは潮の香り。
地平線を越えた先の白熱灯が
曇天の端を赤紫の薄闇に色づけているのを眺めると
今や暗闇は
ファストフードでは得られない高級な懐石料理の様であると知る
静寂もまた同様に。
トラックが慌しく下り坂を落ちるのを聞くと
ひしゃげて歪んだ楽器を夢想する。
影に紛れてあの大層なピアノに轢かれて
そうしてこの思索も終わりを告げればステキだと思うのだけれど

咥内に広がる鉄の味。

 了
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