夢見る死体/RT
 
はなんて綺麗
思えば思うほど水圧は増す

抗えない力の中にいるという
楽なずるい口実

懐かしい夢を見る
光の中で暮らしていた
ときどきの海に
憧れていた頃の


   oo o


私は本当に死体だったかしら
疑いを口にしようとすれば
声が出ない
まさか本当に人魚だったかしら
咳がつかえ ごぼっと口から泡が飛び出る
それがゆらゆらと海面まで上がっていくのを目で追う
天辺は 光が眩しい
暗い海の底に視線を落とし また泡を吐く
ごぼっ ゆらゆら 眩しい
ごぼっ ゆらゆら 眩しい
それを何度も繰り返して
体中の泡をすべて出し切ると
体はますます重く
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