「ブラウンリップ」/菊尾
 

浸りすぎて沈む身体
宙空に浮かぶ間接照明
隔週でやって来てドアを二回ノックするのは夜からの使者
もうすぐ行くから待っていて

隠れて行う私達
まるで禁じられた遊びみたい
チョコレエトアイスは垂れて足首に
ブラウンリップは思った以上にほろ苦い
私達の関係に
なんだかちょっと似ているね


ぼんやりと眺めてるの
くぐもる声に疑問なんて感じたくない
椅子を揺らしてテーブルにある木目をなぞっていたら
その指先に辿りついた
なぞり始めたらくすぐったそうにして
そんなことに喜んだ


夜から夜へ渡り歩いて
どこへ帰っているのか知らないけれど
今晩は繋ぎとめておきたいの
だから今日はお願いを


一度起こして
明け方に
電話なんかじゃなくてその声で
始まりを留めておきたいから
「ゆうべ」はあなただけに使いたい
だから今のように
この夜だけは触れていて
この肌だけに
触れていて

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